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                                                No.2
樹勢調査をやってみよう その2
   葉の大きさ
葉の大きさはその木の水分条件をよく表します。乾燥が続いたり根系の発達が制限されて十分な水分が吸収できなくなると葉が小さくなることが多いです。また長命で樹高の高くなる樹種では加齢に伴って葉が小さくなる傾向があります。これは樹高が高くなることにより上枝の水ストレスが高くなることと、年輪成長幅が小さくなることにより通導部が細くなり、大量の水が通りにくくなることが関係していると考えられます。針葉樹は針葉の長さで判断します。左の写真はスギの葉ですが、右の方が針葉が短く水分条件が十分でないことがわかります。
 同じ樹木であっても樹冠上部と下部、また日当たりの良し悪しで葉の大きさは異なっているのが普通です。胴吹きやひこばえは成長が速く葉も大きいので、それだけで判断せずできるだけ樹冠上部の葉を観察して評価しましょう。
 
   葉の色
 葉の色は光合成の原因物質であるクロロフィルの量を反映しているので、その木の樹勢の良し悪しをみる参考となります。また一般的に、その樹種が健全である場合、葉の色は濃く見えることが多いです。ただし、葉の色は樹種ごとに微妙に異なり、季節によっても展開中、成熟後、落葉前などの時期によっても変化します。したがって、病害虫の被害による緑色の退色、土壌中の無機物の過不足による部分的な葉色の変化などを見分けるには日頃からいろいろな場所、季節に樹木を観察して見慣れておき、葉の色の微妙な変化を見逃さないようにしておく必要があります。

 樹皮の傷
 樹皮の傷の有無やその程度について調べましょう。その損傷の特徴により、病気や腐朽などの障害を発見する手がかりとなります。 
 左の写真は車が枝に接触して皮がはがれた傷です。左の写真はカミキリムシの穿孔あとです。
     
樹皮の新陳代謝
   樹皮の新鮮さはその木の樹幹の成長量を示しています。活発に肥大成長している樹木は樹皮が入れ替わって剥がれ落ちたり、割れ目の間から明るい色をした新しい樹皮が見えたりしてみずみずしい感じを受けます(写真左ムクノキ)。対照的に樹幹がほとんど肥大成長していない木の樹皮には地衣類やノキシノブなどがついていたり、空気の汚れなどにより黒ずんでいたりします。(写真右トウカエデ)なお、樹皮の新陳代謝は同一個体でも部分により異なり、特に傾斜木では下向き側と上向き側とでは異なるので、これらについても注意しながら総合評価を行います。広葉樹は本来なら傾きの反対側を活発に太らせて体を支えようとします。しかし写真左下の木(ケヤキ)は傾斜を支えるために活発に肥大しなければいけない場所にコケがついていてほとんど成長していないことがわかります。
 さらに、樹齢や樹勢によって樹皮の外観が大きく変化する種が多くあるので、いろ
いろな樹齢の樹木を日頃から注意深く観察しておく必要があります。
     
胴吹き・ひこばえ
 胴吹きやひこばえは、病害虫や被圧あるいは強度の剪定により葉が減少すると幹や根株に蓄積されたエネルギーを利用して発生するので、その有無も活力の指標となります。胴吹きやひこばえが出ていれば、その樹木はエネルギー不足の状態にあると考えられるのでマイナス評価となります。しかし、樹幹の蓄積エネルギーが涸渇すると、胴吹きやひこばえを伸長させることすらできなくなるので、その場合はさらに大きなマイナス評価となります。
   
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